不貞行為がなくても慰謝料請求できる?「精神的苦痛」の慰謝料相場とは

慰謝料請求と聞くと、配偶者の浮気や不倫を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
しかし、そもそも慰謝料とは不倫をしたことに対する罰金ではありません。相手の違法な行為によって受けた精神的な苦痛を慰謝するために支払われる損害賠償です。
そのため、不貞行為そのものが確認できなかった場合でも、別の不法行為によって精神的苦痛を受けたのであれば、慰謝料を請求できる可能性があります。裁判所も、慰謝料について「相手方の不法行為によって被った精神的苦痛を慰謝するための損害賠償」と説明しています。
ただし「浮気を疑って辛かった」「相手の言葉に傷ついた」という気持ちだけで、必ず慰謝料が認められるわけではありません。
重要になるのは
・相手がどのような行為をしたのか
・その行為が法律上の不法行為にあたるのか
・精神的苦痛との関係を証拠によって示せるか
という点です。
今回は、不倫や不貞行為の慰謝料を考えるうえで知っておきたい「精神的苦痛による慰謝料」について、請求できる条件や相場、必要な証拠などを解説します。
そもそも「慰謝料」とは何に対して支払われるお金?
慰謝料は精神的苦痛を慰謝するための損害賠償
慰謝料とは、他人の違法な行為によって受けた精神的な損害に対して支払われる損害賠償のことです。
例えば、配偶者が不倫をして夫婦関係を壊した場合、被害を受けた側には大きな精神的苦痛が生じることがあります。このような場合に請求されるのが、一般的に「不倫慰謝料」や「不貞行為の慰謝料」と呼ばれるものです。
しかし、慰謝料が問題になるのは不倫だけではありません。身体的な暴力や継続的な暴言、生活費を渡さないといったDV、モラハラ行為など、不倫とは異なる行為によって夫婦関係が破綻し、精神的な苦痛を受けた場合にも慰謝料が問題となることがあります。
内閣府も、配偶者からの暴力には身体的なものだけでなく、精神的・性的なものなどさまざまな形態があるとしています。
つまり、慰謝料=不倫をした場合だけに発生するお金ではないのです。
「精神的に傷ついた」だけでは慰謝料が認められるとは限らない
一方で、精神的に辛い思いをしたからといって、すべてのケースで慰謝料を請求できるわけではありません。
夫婦で生活していれば、意見がぶつかったり、心ない言葉に傷付いたりすることもあります。しかし、日常的な夫婦喧嘩や性格・価値観の不一致などまで、すべて法律上の損害賠償の対象になるわけではありません。
慰謝料を法的に請求する場合には、相手の行為が法律上保護される権利や利益を侵害する不法行為にあたるのかどうかが重要になります。
そこで関係してくるのが、民法709条と710条です。
慰謝料を請求できる法的根拠|民法709条と710条
民法709条では「不法行為による損害賠償」が定められている
民法709条では、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、それによって生じた損害を賠償する責任を負うと定められています。
簡単に言えば、わざと、あるいは不注意によって相手の権利や法律上守られる利益を侵害し、その結果として損害を与えた場合には、その損害を賠償しなければならないという考え方です。
不貞行為による慰謝料請求についても、この不法行為に基づく損害賠償という考え方が基本になります。
民法710条では「精神的な損害」も賠償の対象になる
続く民法710条では、709条によって損害賠償責任を負う場合、財産以外の損害についても賠償しなければならないと定められています。
例えば物を壊された場合であれば、その物の金銭的な価値を損害としてイメージしやすいでしょう。一方、不倫やDVなどによって受けた精神的な苦痛は、直接金額に置き換えられるものではありません。
このような財産以外の損害に対する賠償が、慰謝料という形で問題になるのです。
慰謝料が認められるには一定の条件がある
精神的苦痛を理由に慰謝料を請求する場合、単に「辛かった」という事実だけではなく、相手の行為や損害との関係が検討されます。
一般的には
・相手に故意または過失があること
・相手の行為によって権利や法律上保護される利益が侵害されたこと
・実際に損害が発生していること
・相手の行為と損害との間に因果関係があること
などが重要なポイントになります。
例えば配偶者から長期間にわたって人格を否定するような暴言を受け、その状況を示す録音があり、さらに精神的な不調によって医療機関へ通院しているのであれば、単に「夫婦仲が悪かった」という場合とは事情が大きく異なります。
慰謝料請求では、精神的苦痛の大きさだけでなく、「何をされたのか」「どのような影響が生じたのか」を客観的に示すことが重要なのです。
不貞行為がなくても慰謝料を請求できる?
慰謝料請求は、不貞行為が確認できなかったからといって、請求できる可能性が完全になくなるわけではありません。
不倫による慰謝料と、それ以外の行為による精神的苦痛の慰謝料は、分けて考える必要があります。
不貞行為以外の行為が不法行為にあたることもある
例えば、不貞行為そのものは確認できなかったとしても、配偶者から継続的な暴力を受けている、人格を否定するような暴言が繰り返されている、正当な理由なく生活費を渡してもらえないなど、別の問題が存在することがあります。
他にも、身体的な暴力だけではなく怒鳴る、長期間無視をする、交友関係を過度に制限するといった精神的な暴力が問題になることも現実です。もっとも、それらの行為が直ちに慰謝料請求を認める不法行為になるとは限らず、内容や程度、期間など個別の事情によって判断されます。
そのため、「不貞行為の証拠がなかった=慰謝料を請求する方法が一切ない」と決めつけるのではなく、夫婦関係の中でほかにどのような行為があったのかを整理することが大切です。
離婚する原因となった行為の争点
慰謝料には、配偶者が行った個別の行為によって受けた精神的苦痛が主な争点になるケースがあり、モラハラやDVといった要因は代表的な事例です。
例えば、長期間にわたって暴力を受けていた場合、その暴力そのものによって受けた精神的・身体的な苦痛について慰謝料が問題になることがあります。
不貞行為がなかった場合でも、別の違法な行為によって精神的苦痛を受けているのであれば、その行為について慰謝料を請求できる可能性があるということです。
「離婚せざるを得なくなったこと」に対する精神的苦痛
もう一つ考えられる争点が、相手の行為によって婚姻関係が破綻し、離婚せざるを得なくなったことによる精神的苦痛です。
これについては、裁判所も慰謝料について「相手方の行為によって離婚せざるを得なくなったような場合などに請求することができる」と案内しています。離婚前であれば夫婦関係調整調停の中で、離婚後であれば慰謝料請求調停を利用して話し合う方法もあります。
長年続けてきた婚姻生活が、相手の重大な行為によって維持できなくなった場合には、「不貞行為があったかどうか」だけでなく、離婚に至った原因や経緯全体が重要です。
精神的苦痛による慰謝料の相場はいくら?
「精神的苦痛を受けた場合、慰謝料はいくらくらいになるの?」という点は、多くの方が気になるところでしょう。
離婚に関連する精神的苦痛の慰謝料については、一般的な目安として50万円~300万円程度と紹介されることがあります。もっとも、法律で「この行為なら○万円」と決められているわけではなく、金額は個別の事情によって大きく変わります。
複数の弁護士監修記事でも、離婚慰謝料についておおむね50万円~300万円程度を目安としつつ、事情によって増減すると説明されている傾向です。
慰謝料の金額を判断する際には、原因となった行為の内容や悪質性、行為が続いた期間、婚姻期間、離婚に至ったかどうか、精神的・身体的な影響、医療機関への通院状況、証拠の有無など、さまざまな事情が考慮されます。
例えば同じ「精神的苦痛」であっても、一度の口論で傷付いたというケースと、何年にもわたって人格を否定する暴言を受け続け、精神的な不調によって通院が必要になったケースでは、当然ながら事情が異なります。
そのため、「精神的苦痛の慰謝料相場は○万円だから、その金額を請求できる」と単純に考えるのではなく、自分のケースでどのような請求が可能なのかを弁護士へ相談することが大切です。
精神的苦痛があっても慰謝料が認められにくいケース
また、精神的に辛い出来事があった場合でも、法律上の慰謝料請求とは別問題になることがあります。
ここでは代表的なケースを簡単に紹介します。
恋人に浮気された場合
結婚している夫婦の場合、配偶者以外の人と肉体関係を持つ不貞行為により、婚姻共同生活の平和が侵害されたとして慰謝料が問題になることがあります。
一方、単に交際している恋人同士の場合には、配偶者と同じ法律関係にあるわけではありません。そのため、恋人に浮気されたという事情だけで、夫婦間の不貞行為と同じように慰謝料が認められるとは限りません。
ただし、既に婚約していた場合や、事実上の夫婦として生活する内縁関係にある場合などは事情が異なります。裁判所でも、内縁関係の解消に伴って慰謝料について話し合う調停手続が設けられています。
合意のうえでの性交渉後に妊娠・中絶した場合
合意のうえで性交渉をし、その結果妊娠や中絶に至ったという事情だけで、直ちに相手の不法行為が成立し、精神的苦痛の慰謝料が認められるとは限りません。
一方で、中絶を無理に強要した、暴力や脅迫があったなど、妊娠・中絶に至る過程に別の違法な行為が存在する場合には、話は変わってきます。内閣府も、中絶の強要や避妊への非協力などを性的な暴力の例として挙げています。
個々の事情によって判断が大きく異なるため、このようなケースでは早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
証拠を残しにくいモラハラ
モラハラについても「精神的に辛いから慰謝料が認められる」というわけではありません。
問題になるのは、モラハラが家庭内という閉ざされた空間で起こることが多く、第三者の目撃者がいないため、実態を客観的に証明することが難しい点です。
「いつも否定される」「威圧的な態度を取られる」と本人が感じていても、具体的な言動を示す証拠がなければ、単なる夫婦喧嘩や性格の不一致との区別が難しくなることがあります。
だからこそ、精神的苦痛による慰謝料を考える場合には、「辛かった」という気持ちだけではなく、その原因となった行為を客観的に示す証拠が重要になります。
不貞行為がなくても慰謝料請求を考えるなら「証拠」が重要
精神的苦痛の原因となった行為を客観的に残す
慰謝料請求を考えているのであれば、まず重要になるのが証拠です。
精神的苦痛そのものは目で確認することができません。
そのため
・何があったのか
・いつから続いているのか
・その結果どのような影響を受けたのか
を第三者にも分かる形で残しておく必要があります。
証拠として利用できるものには、暴言や話し合いを録音した音声、動画や写真、メールやLINE・SNSなどのやり取り、出来事を日時とともに記録した日記、医療機関への通院記録や診断書などがあります。
例えば、継続的な暴言の録音と、その時期から精神的な不調が生じたことを示す診断書や通院記録があれば、本人の説明だけの場合よりも状況を伝えやすくなります。
ただし、「この証拠があれば必ず慰謝料を取れる」というものではありません。証拠の内容や取得方法、その証拠から何を証明できるのかによって評価は異なります。
探偵の調査で不貞行為が確認できなかった場合は?
浮気や不倫を疑って探偵へ調査を依頼したものの、調査期間中にラブホテルへの出入りなど、不貞行為を直接裏付ける証拠が確認できなかったということもあります。
その場合、「証拠が取れなかったから慰謝料請求は絶対にできない」とすぐに諦める必要はありません。
探偵の調査報告書だけではなく、それまでに保存していたLINEやメール、本人との会話の録音、写真、金銭の記録などを合わせて見ることで、別の事実関係が見えてくることもあります。また、不貞行為とは別の行為が夫婦関係の破綻につながっているケースも考えられます。
ただし、探偵ができるのは事実関係を調査し、確認した状況を証拠として記録するところまでです。
「この証拠で慰謝料を請求できるのか」「不法行為として認められる可能性があるのか」といった法的な判断については、弁護士へ相談する必要があります。
慰謝料を請求したい場合は弁護士へ相談を
精神的苦痛による慰謝料請求では、相手の行為が不法行為にあたるのか、どの証拠が利用できるのか、どの程度の慰謝料を請求するのが適切なのかなど、個々の状況によって判断が大きく変わります。
特に「不倫を疑って調査したけれど不貞行為までは確認できなかった」「不貞行為とは別の行為で精神的な苦痛を受けている」という場合には、自分だけで請求の可否を判断することは推奨しません。現在手元にある証拠やこれまでの経緯を整理し、一度弁護士へ法律相談をすることで、慰謝料請求が可能なのか、今後どのような証拠が必要になるのかを確認することができます。
そよかぜ探偵事務所では、調査後に法的な対応をご希望される方に対して、ベリーベスト法律事務所をはじめ、提携する計3社の法律事務所へお取次ぎすることも可能です。
調査によって得られた証拠を「その後どう使えばいいのか」まで含めてお悩みの場合にも、まずはご相談ください。
まとめ|不貞行為がなくても慰謝料を請求できる可能性はある
不倫の慰謝料という言葉は広く知られているため、「不貞行為の証拠がなければ慰謝料を請求することはできない」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、慰謝料は不貞行為そのものに対する罰金ではなく、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。そのため、不貞行為が確認できなかったとしても、別の不法行為によって精神的苦痛を受けている場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。
一方で、「傷ついた」「精神的につらかった」という気持ちだけで慰謝料が認められるわけでもありません。重要なのは、相手が具体的にどのような行為をしたのか、その行為によってどのような損害が生じたのか、そしてそれらを客観的に示す証拠があるかという点です。
浮気調査や不倫調査を行った結果、不貞行為を裏付ける証拠が確認できなかった場合でも、それだけですべての選択肢がなくなるとは限りません。これまでの経緯や現在お持ちの証拠を整理し、慰謝料請求について弁護士へ相談することも一つの方法です。
そよかぜ探偵事務所では、「まず事実関係を確認したい」という段階から、調査後の弁護士へのお取次ぎまで対応しております。不倫や夫婦関係について気になることがございましたら、一人で判断せず、まずはお気軽にご相談ください。
参考文献
・暴力の形態 | 内閣府男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/02.html
・民法 | e-Gov 法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_5
・内縁関係調整調停 | 裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_19/index.html
・精神的苦痛で離婚・・・慰謝料はどうなる?請求の要件と相場を解説│離婚問題解決コラム│東京新宿法律事務所
https://www.shinjuku-law.jp/columns-divorce/rikon-isyaryou-kutsuu/

そよかぜ探偵事務所は、浮気・不倫調査専門の探偵です。
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